令和5年度市政方針
令和5年度予算案及び関連議案を提出するに当たり、新年度の市政運営に臨む私の所信を申し上げます。
昨年の全国の出生数は、統計開始以来、初めて80万人を割り込み、7年連続で過去最少を更新する見通しが示されるなど、予想を超える速度で少子化が進行しています。
当市でも昨年の出生数は287人と、10年前(平成24年、579人)の約半数にとどまり、高齢化の進行と相俟って人口減少の加速化、深刻な担い手不足など、近い将来の懸念が生じています。
少子化の克服は国全体の喫緊の課題となっており、当市においても地域社会への影響を最小限に食い止めるため、早急かつ集中的な対策を講じるとともに、若い世代が結婚・出産・子育てに希望を持ち、実現できる地域社会の構築を急ぐ必要があります。
また、私たちの暮らしは北海道の冷涼な気候やエネルギーとの密接な関わりの上に成り立っており、地球温暖化対策、脱炭素という人類共通の課題の解決に向けて、ともに歩みを進めて行くことが求められています。
「人と緑とまちがつながり ともに育み未来をつくる 健康経営都市」を将来の都市像として掲げる当市において、住みよく快適で活気に溢れた緑豊かな「岩見沢」を、将来を担う世代に引き継ぐことは、私たちに課せられた責務です。
少子化対策や人口減少社会への適応、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やGX(グリーン・トランスフォーメーション)、そしてウィズコロナ社会の構築など、多くの課題が山積しておりますが、まちの将来像を市民の皆さまと共有し、引き続き「オール岩見沢」、「チーム岩見沢」で、持続可能なまちづくりに取り組んでまいります。
市政運営の基本姿勢
社会が目まぐるしいスピードで変化する中、市では次の10年を見据えた新たな「行政改革大綱」、「中長期財政計画」、「職員定員管理計画」の策定を進めています。引き続き「市民の皆さまとの信頼」を市政運営の基本として、市役所改革は次のステージへと移行してまいります。
市政を取り巻く環境が厳しさを増す中、今後も質の高い市民サービスを維持し、レベルアップを図っていくためには、徹底したコストダウンに加えて、未来技術の積極的な利活用と職員のスキルアップを前提とした経営資源の効率的な再配分が絶対条件となってまいります。
新しい時代を見据え、これからも徹底した現場主義のもと、私自身が先頭に立って、全力で市役所改革に取り組んでまいります。
重点的に取り組む分野・新年度予算の主要施策
新年度は、次の6分野を重点的に取り組む分野として位置付け、市政を運営してまいります。
1.地域で支え合う 安全・安心なまちづくり
1点目は、「地域で支え合う 安全・安心なまちづくり」です。
近年の地球規模での気候変動は、私たちの住む岩見沢にも局所的な豪雨や極端な降雪などをもたらしています。「岩見沢市強靭化計画」と「地域防災計画」を両輪として、地域や関係機関等との連携を拡大・強化し、災害に強いまちづくりを推進してまいります。
冬の暮らしを支える総合的な雪対策については、引き続き迅速かつ機動的な除排雪はもとより、地域自主排雪やボランティア除雪への支援、雪下ろし・間口除雪・定期排雪への助成、高齢者宅等への訪問調査や安全確保に関する啓発、除排雪作業へのICTの利活用などを進めてまいります。
市民参画による協働のまちづくりについては、引き続きまちづくり支援窓口を通じ、町会や市民活動団体との円滑な連携を図るとともに、活動に対する支援を実施してまいります。
男女共同参画の推進については、「第3次いわみざわ男女共同参画実践プラン」に基づき、すべての市民が社会の一員として個性と能力を発揮できるようワーク・ライフ・バランスの実現や本年2月に施行したパートナーシップ制度の推進などに取り組んでまいります。
2.みんなが健康で元気に暮らせるまちづくり
次に、重点分野2点目の「みんなが健康で元気に暮らせるまちづくり」です。
「健康経営都市」の取組みについては、引き続き「人もまちも企業も元気で健康」をテーマに、産学官金の連携による、総合的な健康づくりサービス提供基盤の構築を進めてまいります。
市民の健康を「まもる」「つくる」「つなぐ」拠点である「健康ひろば」では、各種健診や気軽に受けられる健康チェック、楽しみながら参加できる健康イベントなどを実施するとともに、健康ポイントについては、紙によるカード方式に加えスマートフォンアプリを導入し、参加の拡大を図るなど、市民の健康づくりを推進してまいります。
疾病の予防と早期発見・治療については、がん検診における道内トップレベルの負担軽減に加えWEB予約など、受診しやすい環境づくりに努め、受診率の向上を図ってまいります。また、5類感染症に移行する新型コロナウイルスや子宮頸がんをはじめとする各種感染症については、感染予防対策に加えて正しい知識の普及や注意喚起など、情報発信と周知啓発の充実に取り組んでまいります。
地域福祉については、誰もが互いに尊重しあい、支えあいながら明るく元気に暮らせるインクルーシブな社会の実現を目指し、権利擁護や相談支援体制の充実、障がいのある方のコミュケーション支援や社会参加環境の整備、アールブリュット作品の発表や鑑賞機会の提供などを通じて、地域の一員としての交流と相互理解の促進を図るとともに、年齢や性別、障がいの有無等に関わらず、誰もが安心して暮らせる共生のまちづくりを進めます。
南空知の中核病院であり、唯一の第二種感染症指定医療機関である市立総合病院については、引き続き、医療スタッフの確保や医療機器の計画的な整備を進め、良質な医療の提供に努めてまいります。
また、新病院の建設に向けては、昨年9月に策定した「岩見沢市新病院建設基本計画」を踏まえ、関係機関と協議しながら、基本設計を実施してまいります。
3.活力と賑わいに満ちた 魅力あふれるまちづくり
次に、重点分野3点目の「活力と賑わいに満ちた 魅力あふれるまちづくり」です。
社会が大きく変革していく中で、「市民生活の質の向上」と「地域経済の活性化」を実現していくためには、地域特性や資源と新たな技術を組み合わせ、持続性の高い新たな社会経済システムを構築することが重要です。
北村地区で取り組んでいる「地産地消・自立型地域エネルギーシステム」の実証事業では、温泉付随ガスや太陽光をエネルギーにマルチ燃料発電機から得られた電力によるEV自動運転バス等の実証を進めており、引き続きCOI-NEXT「こころとカラダのライフデザイン共創拠点」の取組みとともに、北海道大学や研究機関、関連企業との連携による、地域社会全体のイノベーションを進めてまいります。
基幹産業である農業においては、スマート農業のさらなる深化や科学的根拠に基づく地力と生産性の向上、マーケティング分析による競争力の強化など、持続可能で魅力ある岩見沢農業の確立を図るとともに、新規就農者への支援を引き続き実施してまいります。
また、基盤整備や農地防災については、国や北海道、関係機関等と連携しながら、北村地区や大願地区の「国営緊急農地再編整備事業」や桃川排水機場の長寿命化など、計画的な取組みを進め、環境とも調和した安全・安心な営農環境の構築に努めてまいります。
地域経済の活性化については、公共投資である普通建設事業費を一定水準確保するとともに、資金調達を支援する商工金融円滑化事業、受注機会の確保と定住促進に資するプレミアム付建設券発行支援事業などを通じて、市内企業の経営基盤の安定・強化を図り、地域経済の好循環へとつなげてまいります。
中心市街地の活性化については、「まちなか活性化計画」に基づき、官民協働による賑わいの創出や商店街の魅力向上などの取組みを進め、まちなか回遊の促進を図ってまいります。
また、岩見沢商工会議所が中心となって構想を進めている「新商工会議所会館」の建設に向けた支援に引き続き取り組んでまいります。
新たな産業の創造と雇用の創出については、農業やICTなど、地域特性を活かした新事業の創出や企業間連携、企業誘致に取り組むとともに、人材育成や創業支援、テレワークの推進など、多様なライフスタイルに対応した魅力ある就業環境づくりを進めてまいります。
観光振興については、岩見沢市観光協会を中心に引き続きメープルロッジや北村温泉などを核として、インバウンドの回復とマイクロツーリズムの双方を意識したプロモーションの強化を図るとともに、地域資源を活かした着地型旅行商品の開発や特産品のネット販売など、戦略的な取組みを展開してまいります。
また、東部丘陵地域においては、豊かな自然環境の中、地域おこし推進員や地域の方々とともに、芸術や歴史資源を活用した魅力づくりに取り組んでまいります。
4.豊かな心と生きる力をはぐくむまちづくり
次に、重点分野4点目の「豊かな心と生きる力をはぐくむまちづくり」です。
子ども・子育て支援は、引き続き「第2期岩見沢市子ども・子育てプラン」に基づき、子どもたちの心身の健やかな成長を支援してまいります。
「日本で一番母子にやさしい、市民が主役のまちづくり」を掲げ、北大COIとともに取り組んできた母子健康調査や遠隔健診、低出生体重児の大幅な減少などの成果を活かし、妊産婦が安心して健康な子を産み、育てることができるよう「こども・子育てひろば『えみふる』」を中心に、乳児全戸訪問、妊婦・乳幼児健康診査、新生児聴覚検査、産後ケア、産婦健康診査、育児相談体制の充実など、保護者に寄り添った伴走型相談支援を展開するとともに、経済的支援として妊娠届出時と出産後にそれぞれ5万円の給付を実施してまいります。
また、経済的負担軽減の観点からは、市独自の取組みである3歳未満の保育料の引下げや昨年から実施している材料価格上昇分の学校給食費への転嫁据え置きを継続するほか、10月からは子どもの医療費助成について、対象年齢を入院・通院とも高校生世代まで拡大し、子育て世帯への支援を強化してまいります。
また、教育訓練や資格取得を目指す方に対する給付金や市独自の「ひとり親家庭児童修学援助金」のほか、「不妊不育症治療費助成」の拡充を図ってまいります。
子育て環境については、引き続き保育士や幼稚園教諭の人材確保を支援するとともに、地域型保育事業による0歳児から2歳児までの受入れ枠の確保や子育て短期支援事業、子育て支援夜間養護等事業、産前産後ヘルパー事業、病児保育事業、病児・病後児の対応も含めたファミリー・サポート・センター事業やブックスタート事業など、安心して子育てできる環境づくりを重層的に進めてまいります。
また、医療的ケアや特別な支援を必要とする子どもが安心して保育や教育を受けられるよう学校への看護師や支援員の配置、未熟児訪問指導や児童発達支援巡回相談、子ども発達支援センターを中心とした早期療育につなげる仕組みづくり、児童福祉サービスの利用者負担無料化などを引き続き実施してまいります。
教育は「まちづくり」という理念のもと「教育大綱」に基づき、教育委員会との円滑な連携を図りながら、GIGAスクール環境の活用と合わせた質の高い学習活動の展開、教員のスキルアップなどに取り組むとともに、コミュニティ・スクールや地域との交流促進などを通じて魅力ある学校づくりを進めてまいります。
令和5年度、岩見沢市は開庁140年、市制施行80周年を迎えます。同じく創立100周年の節目を迎える北海道教育大学岩見沢校と連携し、市内各所で芸術文化、スポーツに係る記念イベントを集中的に開催するとともに、大学の持つリソースをまちづくりに活かし、市民との交流や協働を深める取組みを進めてまいります。
5.自然と調和した 快適で暮らしやすいまちづくり
次に、重点分野5点目の「自然と調和した 快適で暮らしやすいまちづくり」です。
国際的な取組みが求められている地球温暖化対策について、当市においても、豊かな自然環境とその恵みを未来の世代に引き継いで行くため、ここに2050年までにCO2排出量を実質ゼロとする「ゼロカーボンシティ」を目指すことを表明いたします。また、策定を進めている「岩見沢市地球温暖化防止実行計画(区域施策編)」に基づき、市民や事業者の皆さまとともに、脱炭素社会の実現に向けた持続可能な地域づくりを進めてまいります。
道路や橋梁、上下水道、生活関連施設など、都市環境を支える社会インフラにおいては、計画的な長寿命化や、機能の集約・再編等に取り組むとともに、LED照明の導入などによるエネルギー効率の向上を図ってまいります。
また、都市経営における持続性確保に向け、「都市内ループ道路」と位置付ける「西20丁目通」の2期工区について用地測量等を進めるほか、「コンパクトシティ・プラス・ネットワーク」のまちづくりを目指し「立地適正化計画」の策定に向けた調査等に着手してまいります。
住宅施策においては、高い断熱性と耐震性能を備えた「北方型住宅」への建設費補助や、太陽光発電システムの導入支援の拡充、木造住宅等の耐震改修費助成を継続するとともに、市営住宅については、中長期的な需給バランスを考慮した適切な戸数管理を進めてまいります。
公共交通については、引き続き「地域公共交通計画」に基づき、地域の足の維持・確保を図るとともに、温室効果ガス抑制の観点からも一層の利用促進を図ってまいります。
快適な暮らしを支える基本的なライフラインである上下水道については、老朽管の更新や施設機能の効率化など、計画的な整備を進め、運営基盤の安定と強化を図ってまいります。
都市近郊の自然林として学術的にも評価の高い利根別原生林は、予定される大正池の供用開始と合わせ、豊かな自然環境を活かした体験学習のフィールドとして環境教育の促進に資するとともに、「いわみざわ公園キャンプ場」や「バラ園」など、周辺施設と一体的な利活用が図られるよう散策路等の整備に着手してまいります。
また、市有林や民有林についても、除間伐や作業道整備など、適正な維持・管理を推進するとともに、森林の持つ多面的機能の維持・増進を図ってまいります。
地域情報化については、国の「デジタル田園都市国家構想」も踏まえ、高度ICT基盤の一層の充実とマイナンバーカードの普及促進、行政サービスをはじめ産業や教育・子育て、健康や医療など、地域全体のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を加速させ、人口縮減時代に適応した持続性の高い地域社会の構築を進めてまいります。
6.市民とともに創る 持続可能で自立したまちづくり
最後に、重点分野6点目の「市民とともに創る 持続可能で自立したまちづくり」です。
まちづくり基本条例の基本理念である「市民主体による自主自立のまちづくり」は、行政と市民の皆さまが情報を共有し、まちの未来を共に考えることが出発点であり、市民の「まちづくり」への思いを、市政に最大限反映できるよう、引き続き積極的な対話と広報紙やホームページ、SNSなど、情報発信の充実を図ってまいります。
行政サービスの維持、充実に向けましては、今後の厳しい収支見通しを踏まえ、市民の皆さまへの丁寧な説明に留意しながら、公共施設の再編を加速させるとともに、人口減少下で、複雑化かつ高度化していく地域課題に対応していくため定住自立圏など、南空知圏域の広域連携について、関係自治体との協議を進めてまいります。
窓口業務のスマート化については、新庁舎の供用開始とともに導入した「書かない窓口」の拡張を図るほか、電子申請など、今後も利便性向上と業務の効率化を進めるとともに、「人」の力を必要とする業務には重点的に人材を配置し、市民の皆さまが質の高いサービスを実感できる、スマート自治体の実現に取り組んでまいります。
むすび
令和5年度の予算は、「選択と集中」の視点に立ち、事業目的別予算編成の手法により、必要な事務事業の新設、既存事業の再構築を行い、事業間の相乗効果による好循環の拡大を図るとともに、子ども・子育て支援をはじめとした、地域の未来に資する事業に重点的に配分いたしました。
その結果、一般会計の総額は466億円、前年度比3.7パーセントの減、特別会計と企業会計を合わせた全会計の総額は890億5,300万円、前年度比1.6パーセントの減となりました。
また、総合戦略事業については、33事業で6億7,964万円を計上したところであります。
厳しい財政環境の中、財政調整基金から9億8,000万円の繰り入れをいたしますが、持続可能で自立した行財政基盤の確立に十分留意するとともに、必要な施策全般にバランス良く予算を配分することができたものと考えております。
以上、令和5年度の市政方針と所信を申し上げました。
議員各位並びに市民の皆さまのご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
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更新日:2023年02月27日